「不思議な縁だね」
そう、家族がつぶやきました。
本当に、確かに。
そして、もしかしたら縁なんて、
そんなものから始まるのかもしれません。
ちょうど1年前、たまたま通りかかった道で、救急車を呼んで差し上げた女性がいました。道路脇にうつ伏せに倒れていたのです。幸い意識はしっかりしていましたが、骨折しているのか、痛みを訴えていて、救急車を呼んでほしいと言われました。
母のために数回救急車を呼んだことはありますが、それも20年以上前の事。緊張しました。
とにかく、場所を伝える事が一番難しかったです。
そばに電柱がない。住宅街。一方通行。
「何が見えますか?」と言われても、住宅が並んでいて、家の表札しかない。その表札にも住所は書かれていない。他の通行人の助けも借りる事が出来たので、少し離れた場所の電柱まで走って行って、番地を伝える事が出来ました。
NHKの「エマージェンシー コール」や民放のドラマを見ても、伝え方の難しさを学んでいます。
救急車の中まで付き添う事なく、道端でお送りして終えたのですが、救急車が到着するまでの間、この女性から、どうしても連絡先を教えてほしいと言われました。だいぶ躊躇したのですが、87歳、一人暮らしというこの女性の事が、これからも気になってしまう様な気がして、差し出された手帳に連絡先を書きました。
次の日、携帯電話に「入院して手術する事になった」と連絡があり、その後、数回のやり取りの後、退院したのでと、ご自宅にお招き頂いたのです。お茶の時間を過ごしました。ご近所さんとのお付き合いがあって楽しく暮らしていらっしゃいました。
その後も、偶然、洋菓子店でお会いしたりと、やり取りが続いていたのですが、先月、突然の電話でお引越しのお知らせ。遠方なので、これからは、なかなか会えそうにありません。
「せっかくお友達になれたのに」と、言って下さった優しい声が、心に残っています。離れていても、縁は続きます。どうぞお元気で。また、おしゃべりしましょう。
アクシデントがなければ出会うことのなかったこの縁は、
今は素敵な縁となりました。